さて、明日10月1日で東海道新幹線は開業50周年を迎えます。そこで、数回にわたって私の所蔵している切符から東海道新幹線にまつわる切符をご紹介していきます。
国立科学博物館に保存されているマルス101。人形前の端末、奥がホストコンピュータ |
1964年というと、新幹線開業もそうですが、なんといっても東京オリンピックでしょう。新幹線開業後の10月10日から開催されましたが、実はコンピュータによる記録管理を行った初めての大会で、コンピュータ時代が到来したことを象徴する出来事でした。国鉄でもこの年の2月に座席予約システム「マルス101」を稼働させました。従来、列車の座席は「乗車券センター」というとことで台帳によって管理されていたのですが、発売に時間がかかり、また人による作業のため誤発売も目立っていました。国鉄は1960年に作った「マルス1」を足掛かりに本格的な座席予約システムの構築を目指し、72列車32.000席収容可能な「マルス101」が完成しました。列車の座席管理や切符の発売をコンピュータ化することによって、数十分以上かかっていた指定席がおよそ30秒で発売ができ、国鉄近代化の先陣を切りました。
昭和39(1964)年10月10日発券のB特急券。特急料金は3タイプに分けられ、 B料金は「ひかり」、C料金は「こだま」となりました。A料金は東京―新大阪間 無停車列車に課せられる予定でしたが、列車自体が設定されませんでした。 |
国鉄が威信をかけて作った東海道新幹線ですから、列車の座席指定には当然「マルス」が使われたかと思いきや、開業1年間は前時代的な台帳による手発売でした。計画では「マルス」の導入が明記されていますが、開業後の記事にも「マルス」の開発が遅れやむを得ず手発売になった、とあります。、在来線の4列座席を想定して作られていたため、新幹線の5列座席に対応できなかったのです。また、まだコンピュータの信頼性が低かったため「マルス」によって台無しにされては困る、在来線よりも高価な新幹線には「マルス」が必要なほど乗客がいるのか、との意見もあったようです。
新幹線開業後、在来線に加え新幹線の特急券を求める旅客で駅の窓口は混雑しました。速さがうたい文句の新幹線でしたが、切符の発券スピードはむしろ以前より遅くなり、苦情も殺到しました。中には3時間以上待った旅客もいたようです。「乗車券センター」では駅からの問い合わせが集中し電話回線がパンクするなど処理能力の限界を超えていたのです。そこで、国鉄はマルス101をスペックアップさせた新幹線用「マルス102」の製作を急ぎました。
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